~品川区・中野区・新宿区・豊島区を対象に~
A Study on Policy and Practice of
Infrastructure Provision for Densely Built-up Area Improvement
~Case Study of Shinagawa Ward , Nakano Ward, Shinzyuku Ward and Toshima Ward~
~Case Study of Shinagawa Ward , Nakano Ward, Shinzyuku Ward and Toshima Ward~
都市住宅学39号 2002 AUTUMN
下田周公・高見沢実
本分PDF https://www.jstage.jst.go.jp/article/uhs1993/2002/39/2002_85/_pdf
はじめに
東京都は阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、「防災都市づくり推進計画」を策定している。しかし現況としては、「地域内では宅地面積や道路幅が狭く、複雑な権利関係や建物所有者の高齢化に伴って住宅更新が停滞し、更新と併せた公共施設整備も進んでいない」と言われている。
そこで本研究では、東京都における整備主体である特別区の密集住宅市街地整備促進事業への取り組み方に着目し、密集市街地整備の具体的な現況を事業実績より把握し、今後の密集市街地整備の方向性を整理することを目的とする。なお、密集市街地整備を考えた場合、まず重要な課題として挙げられるのが狭隘道路の拡幅整備であることから、この点を中心に本研究を行った。
研究方法、研究対象
調査対象地区の選定は、既往研究において調査が行われた東京都23区の中から、住環境政策の一環として密集市街地整備を取り組み、かつ密集市街地における基盤整備の取り組み方に特徴のある品川区、中野区、新宿区、豊島区の4区を選定した。
本研究の方法は、実態調査と各区に対するヒアリング調査及び各区の密集住宅市街地整備促進事業関連資料の調査等による。各区の密集市街地整備の現況を基盤整備について整理し、密集市街地の基盤整備の今後の方向性についてまとめを行った。
品川区
基盤整備の方針…細街路整備と壁面後退を誘導しながらの基盤整備、生活道路、区画道路の拡幅整備
基盤整備の実績…民間活力を利用した共同建替えに伴う前面道路の拡幅整備
実績をあげられていない基盤整備の状況…大規模共同住宅等の建替えに伴った基盤整備以外は、顕著な進捗状況が見られない。
見直しと今後の整備方針…各地区に防災再開発促進地区が指定され、重点整備地区として密集市街地整備を特化する方針である。共同建替えを推進し、それに伴う前面道路の拡幅整備を進める方針であるが、住民の共同化合意が得られず基盤整備が進捗していないのが現状である。
中野区
基盤整備の方針…地区計画の策定、木造賃貸住宅地区整備促進事業、既存道路の拡幅整備、行き止まり路の解消のための新設道路の建設整備
基盤整備の実績…前面道路の拡幅整備、避難経路の確保
実績をあげられていない基盤整備の状況…建替えにあわせて基盤整備が着実に進められているが、顕著な進捗状況が見られない。
見直しと今後の整備方針…各地区に防災再開発促進地区が指定され、重点整備地区として密集市街地整備を特化する方針である。
新宿区
基盤整備の方針…市街地再開発事業、地区計画の策定、前面道路の拡幅整備、細街路整備と壁面後退を誘導しながら基盤整備
基盤整備の実績…大規模共同住宅等の建替えに伴う前面道路の拡幅整備、基盤整備に活用するためのまちづくり用地の取得
実績をあげられていない基盤整備の状況…個別建替えに伴う前面道路の拡幅整備には顕著な進捗状況が見られない。
見直しと今後の整備方針…各地区に防災再開発促進地区が指定され、重点整備地区として密集市街地整備を特化する方針である。
豊島区
基盤整備の方針…細街路整備と壁面後退を誘導しながらの基盤整備、住民参加を基調とした修復型のまちづくりによる基盤整備
基盤整備の実績…新設道路整備完了、主要道路間の通行可能、基盤整備に活用するためにまちづくり用地も積極的に取得
実績をあげられていない基盤整備の状況…沿道の個別建替えに併せて用地買収が行われ基盤整備は進められているのだが、地区全体として整備効果が目に見えない。
見直しと今後の整備方針… 防災再開発促進地区が指定され、密集市街地整備を特化する方針である。
まとめ
各区とも一定の成果を挙げているものの、基盤整備が計画通りに進んでいないことから整備効果が目に見えない面もあった。
今後の密集市街地における基盤整備に対して四点の方向性
1.地区計画の策定
2.低未利用地やまちづくり用地の取得活用
3.自力更新が困難なまちに対する共同建替えを利用した前面道路の拡幅整備計画
4.行政評価による密集市街地整備の見直し