Saturday, January 5, 2013

非線引き自治体における用途地域の拡大に関する研究

平賀敬治、岩本陽介、松川寿也、中出文平、樋口秀
 
日本都市計画学会 都市計画論文集 No.42-3 2007年10月  

 
    
 
1.研究の目的と背景
 
 平成12年の都市計画法の改正以来、区域区分は都道府県が用途地域は市町村が指定することとされてきた。区域区分がされていない市町村では、人口が減少する一方で用途地域を維持・拡大する傾向が高い。そこで、区域区分されていない自治体で人口を減少させながらも用途地域を拡大している自治体を対象とし用途地域拡大の動向を検証し、拡大の理由や年次、拡大後の問題点などを明らかにしたうえで、用途地域外の農用地区域との関連性を調査し、今後の用途地域のありかたについて考える。
 
 
2.研究の内容
 
 調査対象として秋田県横手市、新潟県加茂市とする。抽出方法は、①平成12年以前に合併や線引きを行っていない②昭和50年から平成12年まで連続して用途地域を指定している③昭和50年から平成12年まで連続してDIDを形成している、とする。さらに用途地域増減と人口増減を調査し、人口が2%以上減少している中で、用途地域を5%以上増加していることを条件に加える。また、拡大した用途地域は工業用地として指定された地域を除き、住所・商業・準工業系用途地域として指定された地域に限定する。さらに、当初用途地域と拡大用途地域にDIDが形成されていない割合を分析し、当初・拡大用途地域ともにDIDが形成されている割合が低い自治体と高い自治体である秋田県横手市と新潟県加茂市を調査対象とする。
 横手市は用途地域を拡大した地域ではDIDは形成されていない。調査では、2自治体ともに人口フレームを過大に設定されていたと考えられる。具体的には、加茂市は人口は減少すると予測していたが、減少の傾きが予想以上だった。横手市は増加と予測していたが、実際には平成7年以降減少に転じている。2自治体ともに用途地域を拡大するさいの理由は、人口が増加するため用途地域を拡大する、また人口は減少傾向にあるが核家族化の進行により世帯数が増加するため用途地域を指定するというものであった。高密度な市街化が行われずスプロールした結果としては、用途地域の拡大が人口フレームとリンクしていないため将来の土地利用の予測と異なったためと考えられる。
 残存農地について考えると、加茂市では用途地域内の残存農地は今後減少していくと考えられるが、横手市では残存農地は用途地域内に広く分布しており今後も農地として残ってしまうと考えられる。これは用途地域内で市街化が十分に進行していない状態で新規に用途地域を指定してしまったため、開発が分散されてしまったのではないかと考えられる。横手市では区画整理事業も計画されていたが廃止となり、計画地の土地利用は進まないままとなっている。農用地区域の変遷は、2自治体とも用途地域を拡大するさいは農振の白地に用途地域を指定し農用地区域を除外しての用途地域策定は行われなかった。
 
 
3.まとめ
 
 横手町の事例でもあったが、残存農地が多く、かつ市街地が形成されておらず人口も減少している状態での用途地域の拡大はスプロールを引き起こしてしまう。用途地域を拡大する場合は、単に拡大するのではなく、拡大前に用途地域が指定で市街地が形成されていない地域では、現在の都市的土地利用を進めて高密度な土地利用を考慮することが重要である。市街化が進行しておらず、残存農地が多く残っている地域においては、スプロールやミニ開発をさけるため特定用途制限地域や農用地区域の指定などを考える必要がある。